自分の意志で世界を変えるとは?― 魔術師のカードの問いにハウルはどう答えたか

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魔術師のカードとは?

タロットの旅において、魔術師は「愚者」の次に現れる存在です。
それは、無垢な魂が「自らの力に気づき、それを世界に働きかける」
という変容のはじまりを象徴します。

魔術師は、天と地を結ぶ手の動きで、「上(理想・霊性)」と
「下(現実・行動)」をつなぐ者でもあります。

目の前に並ぶのは、4つのスートであるワンド(情熱)・カップ(感情)
・ソード(知性)・コイン(現実)を、意志によって形にしていく者です。

しかしその力は、時に「傲慢」や「虚無」にもつながるかも知れません。
それがこのカードの両義性であり、だからこそ深い意味があります。

ハウルという「魔術師」
ハウルはまさに、魔術師の象徴です。
彼は圧倒的な魔力を持ち、空を飛び、城を操り、姿すら変えられます。
そしてそれを魅せる術も知っています。

しかし、彼は「自らの意志」では動けない要素があります。
魔法の契約に縛られ、戦争を嫌いながらも傍観し、愛を恐れて姿を変えます。
ハウルは、魔術師のカードの中でも、逆位置に近い魔術師かも知れません。
力はあるけれども、それを自分の本質に沿って使えない存在だと言えます。

魔術師の裏側――自分の心とつながれない者
魔術師のカードが輝くには、「自分の内なる声」と「外の世界」とを一致させる
必要があります。

けれどハウルは、自分の心の傷と向き合うことを恐れ、魔法という道具を、
「逃げるため」に使っていました。

それはまさに、魔術師が力を誤用したときの姿です。
自分の虚像に閉じこもり、現実を避ける者です。

彼はソフィーに出会わなければ、永遠に「天と地」をつなぐ本当の魔術師には、
なれなかった可能性があります。

変わることを恐れる天才の肖像
ソフィーがハウルに差し出したのは、「自らの意志を持って振る舞う」ということです。
それは、魔術師が本来進むべき「自分の意志で世界に働きかけること」への覚醒でした。
愛を信じること、戦争に背を向けず、意思表示をすること、自分の姿を隠さず、
受け入れること、これらを通して、ハウルは魔術師として正位置に戻っていったのです。

魔術師の問い:あなたは何を創ろうとしているのか?

魔術師のカードが語りかけるのはこうです。
「あなたは、今、持っている道具は、どんなものですか?」
「それを、誰のために使っていますか?」
「あなたの意志は、あなた自身に届いていますか?」
ハウルのように、「何でもできるのに、何も変えられない」状態に
陥っているとしたら?
魔術師のカード的に必要なのは、愛されることではなく、意志を持つことかも知れません。

もう一つの魔法――ソフィーの沈黙する力
ハウルが魔術師として物語の主役に見えるとき、その影で、静かに物語を動かしているのが
ソフィーです。
彼女には、ハウルのような華やかな魔法も、城を操る力もありません。
けれど彼女の中には、「自分の人生を、自分で選び直そうとする力」がありました。

年老いた自分を、いったん受け入れること、美しさや若さに執着せず、行動し続けること、
他者に尽くしながらも、自分の言葉を失わないこと、これらは、魔術師の持つ「外へ放つ力」
とは逆の、「内なる魔法」とも言えるものでした。

ソフィーは裏の魔術師だったのかも知れない。

ソフィーは、魔術師のテーブルに並ぶ道具を持ってはいません。
けれど彼女自身が、誰かを変化させる触媒になっていきます。

ハウルが変わったのは、ソフィーが特別な魔法を使ったからではありません。
彼女が「恐れずに関わり続けた」からです。
何度姿を変えられても、どれだけ遠ざけられても、彼女は、ハウルの心の動きを
見続けていました(献身でも隷属でもありません)。
これはまさに、「魔術師がその力を、自分ではなく他者のために使うようになる」
という転回点でもあります。

だからこそ、ハウルの魔術師のカードは、正位置に戻った。

魔術師は、自分の力だけで完結する存在ではありません。
その力をどう使うか、誰のために使うか?それが定まったとき、初めて、創造の
エネルギーが愛や理想へと変わり始めます。

ハウルにそれを教えたのは、戦った者ではなく、魔法を見せつけた者でもなく、
ソフィーの存在でした。

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